まちづくりの効果をどう測るか

まちづくりの効果をどのように測るのか

これは、私たちが長い間、問いかけられてきた課題です。

今現在でも、明確な答えは持ち合わせておりません。


まず、このことを考える際に、効果測定の対象となる「まちづくり」とはいかなるものか、それをパリッとさせる必要があるのですが、それがどれだけ難しいかは容易に想像がつくでしょう。

まちのゴミ拾いをしても、まちづくりと言えるでしょうし、面的な開発をしてもまちづくりなわけです。 

そうなると、アクションの特性や、アクションが行われている場所の地域特性を踏まえて、個別個別に測定の仕方を考えていくことになるわけです。

それは仕方がないとしても、それぞれでまったく異なる方法により、異なるスキル技術により行われていたのでは、比較することもできません。

そこで、なんとか考え方くらいは整理しておく必要があるよね、ということで、これまでもいろいろ研究がされてきたわけで、現在もされているのです。

私は、不動産を切り口とした話の展開が得意なので、まちづくりも不動産の利活用を切り口としたまちづくりを例にあげて考えてみたいと思います。


例えば、こんなことを想定してみましょう。

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ある地域の空き家が魅力あるカフェになり、そこで提供されるパスタがとても美味しく、スタッフの若者がとても魅力的であり、遠方からも人が訪れるようになる。

それを起爆財として、周辺のお店もきれいにリノベーションされ、空き家も次々に利活用される。

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この効果として、一般的に考えられるのは、観光客の増加や消費額、関係人口の増加、そして、空き家のリノベーションで地域におちる投資額などがあります。

リノベーションがされればされるほど、地域にお金がおちていくわけです。


しかし、ここで冷静に考えてみます。

このように点のまちづくりが面として展開されている効果としては、地域の魅力向上がもっともわかりやすいでしょう。

では、その地域の魅力向上とは何も持って測ればよいのか。


例えば、観光客を呼び込むのに、

「地域の魅力」の量、「建物の魅力」の量、「サービス」価値の量、「人の魅力」の量があるとします。

一人を呼び込むのに、それぞれがある一定量が必要であるとします。

これを一人を呼び込むための原単位と考えます。

点のまちづくりが面に広がり、集積していくということは、「地域の魅力」の量が増えていくことを意味しています。

するとどうでしょう。

観光客一人を呼び込むのに必要な建物の魅力の量は圧縮されます。つまり、建物の魅力を高めるために必要なコストが圧縮するわけです。


まちづくりが展開され、地域の魅力が高まれば高まるほど、一人を呼び込むために必要なコストは圧縮され、これまでと同じコストで一人ではなく二人を呼び込むことができるようになる。
つまり、まちづくりの効果を地域におちる建物の工事額で測ろうとすると、ミスリードをする可能性があり、逆に一人を呼び込むために地域におちる工事額は少なくなる可能性があるのです。
逆に、これをまちづくりが集積し、熟成してきた効果として捉えることができるとも考えられます。

このような考え方は、現時点では、「考え方を整理しています」という段階で、なにかの事例に基づいて実証されているわけではありませんが、今後、まちづくりの効果を長期的に捉えようとした場合には、このような考え方、つまり、まちづくりを展開することにより地域の魅力が高まった効果をどのように測るか、という視点がとても大事になると考えています。


地域デザインラボさいたま シニアアドバイザー
小沢 理市郎



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