リサーチの技術 その3 マクロとミクロの目線
マクロとミクロの目線
リサーチの技術、第三回目は「マクロとミクロの目線」です。
マクロミクロというと、経済学を思い浮かべる方も多いかと思いますが、
ここでは、リサーチにおける目線のレベルを表しています。
前号では、リサーチにおける分解と再構築の考え方をご紹介し、その中でどのような目線が必要かに触れていますが、本号ではもう少し詳しく解説してみます。
これから、シンクタンクへ業界へ飛び込もうとしている方、すでに飛び込んだ方、若手を育成する立場の方、そして、シンクタンクとビジネス上のお付き合いがある方などが参考にしていただけると幸いです。
私(及び私の同僚も同じ体験をしていますが)が、仕事が終わり、家庭に戻った時、頭が家庭モードに切り替わらない状況ですと、普通の会話でもとても違和感を感じ、また、話相手の方も同じ違和感を感じることがあります。
また、私たちは仕事上、様々な業種の方と数多く接する機会を持ちますが、特定の業種の方にヒアリングをしたり、仕事のお話をする場合にも、似た感覚に襲われます。
一般的に、特定の業種で、あるタスクを持った方がお仕事をする際には、そのお仕事を効率的に、効果的に行うための目線を持っています。
捉えている物理的なエリアの広さも目線の違いにダイレクトに影響しますが、なんというのでしょうか、世の中を見る角度というか、そんなものも異なります。
これは、マクロの目線が良いとか、ミクロが良いとか、その良し悪しを言いたいわけではなく、置かれている立場、業種によって、最適な目線があると感じるのです。
一方、私たちのような人種は、特定の目線をもっていないことが多くあります。
人によっては、得意な目線、得意な切り口をもっていて、前回紹介したようなぼやぼやっとしたモノをそこから切り込んでいくことはありますが、基本的にマクロからミクロを常に行ったり来たりしています。
例えば、マクロな目線が必要なかなり大きなテーマの話をしていたとします。
ある方が、ちょっとわかりにくいようなお顔をしていたり、話がかみ合わなかったりした場合には、具体的な事例をあげて説明することがあります。
事例とは、話したいテーマの一部分しか表現できないのですが、そこから話を切り出した方がうまくかみ合う場合が多いのです。しかし、事例ばかりあげていると、本来議論したい事柄の本質を話すことができません。事例が「ミクロ」だとすると、そこからマクロの話にうまく誘導する必要があります。
また、私たちは、様々な専門領域を持った学識者や様々な業界の方が集まる会議の進行役となることが多くあります。
こういった会議では、ある共通項を持った方々が集まるのですが、物事を見る目線はそれぞれ異なるので、ある方が話した内容を受けて、どなたかに話を振るときには、振り先の方が置かれている立場を踏まえて、一度こちらの方で目線を変換した解釈を加えたうえで、話を振らないと議論がかみ合わなくなります。
つまり、常にマクロからミクロまで、目線が行ったり来たりするのです。
ただし、マクロからセミマクロ、ミクロと話をつなげる際には、その変換過程のロジックが明確ではないと余計にわかりにくくなるので、少々くどい説明を行います。
会議の場ではそれで良いのですが、その頭のまま家庭に戻ると、
「理屈っぽい…」
と言われてしまうのです。。。
それを言われる度に、猫をなでながらうなだれ、
頭の切り替えを行います。
こういった、マクロミクロの行ったり来たりは、ある程度の経験値が必要なので、若手の方は、まずは与えられた作業をしっかりとこなすことから始まりますが、徐々にプロジェクト全体を俯瞰して、その中での自分の作業の意味合いを理解していくことになります。
そのうち、クライアントとの打ち合わせや、様々な方が集まる会議でも、マクロミクロの目線を柔軟に使い分けて、わかりやすい説明やプレゼンが行えるようになるのです。
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