空き家利活用の良い事例を教えてください? 機能×空間×時間
空き家利活用の良い事例を教えてください。
これは、前職の時、そして今でもとても多い問合せの一つです。
主に自治体の皆さまからのリクエストが多いのです。
以前は、
「わかりました。どんな事例をお探しなのですか?少しお話をお聞かせください。」
と、できるだけ先方の問題意識を引き出し、
できるだけ喜んでいただけるような事例をご紹介していた(つもりである)。
しかし、紹介した後に、たいていはこんなオチになる。
「でも、これって、この人がいたからできるんでしょ?」
「これは、うちには無理だよなあ・・」
はい。そうなのです。
もともと市場からドロップアウトしている空き家を再生しているわけですから、
地域にある、ありとあらゆる資源
事業者や係わった人たちの熱意、スキル
の投入により、「良い事例」は生まれているわけですから。
地域の個別性
物件の個別性
かかわる人の個別性
その時、時代の個別性
など、個別性の集合体のようなものなのです。
よって、ある時から、「良い事例」というものをご紹介するのは辞めたのです。
ですが、問い合わせは依然として多い。
今の私はこう答えます。
「ご自身のまちの特徴や、利活用したい空き家の特徴をよく考えて、キーワードを幾つか考えてください。そして、ネットで検索してみてください。
今の時代、ネットには空き家利活用の事例はゴロゴロしていますから」と。
ここで大切なことは、きちんと地域の実情を振り返り、分析し、利活用のイメージを描き、キーワードを考えること、なのである。
これでヒットした事例が、その方、その自治体にとって、一番納得できる事例であるはずなのだ。
「オザワなら、隠し玉のとびきりの事例を知っているのではないか?」とご期待いただけることはうれしいのですが、そんなものはないのです。
機能×時間×空間
しかし、それだけではさすがに冷たすぎる。。
なにかお力になりたい。とコンサルタントの血が騒ぐのです。
とはいえ、私はシンクタンクの経営者であり、アナリストであり、コンサルタントです。
自分の手で空き家を利活用することもできませんし、その技量もありません。
しかし、確かに全国の何百という事業者の方々とネットワークがあり、常に情報が蓄積されていました。
ですので、自分なりに分析して整理していたのです。
一般的に市場からドロップアウトしている空き家というものは、立地が悪いことに加えて、建築時期が古く、規模が大きいのです。
その大きな住宅を、平均世帯人員2.0名を切ろうという勢いの現在において、住宅として使いこなせる家族も限られています。
よって、コンバージョンを考えるわけですが、それにしても飲食や小売りなどの単一用途でその大きな空間を満たすことは極めて困難なのです。
言い方を変えれば、その単一用途で空間を充足させるほどのマーケットが地域にはないのです。
しかし、その地域には、小さくとも、薄くとも、なんらかの需要、マーケットがあるものです。それをできるだけ集めてきます。
- ちょっと集まれるカフェだったり
- 大きなものを広げて作業できるスペースだったり
- 大量の洗濯ができるランドリーだったり
- テレワークができるスペースだったり
- 料理をつくるスペースや施設だったり
- 集会場に使えるスペースだったり
- 親戚が来た時に宿泊できる離れ的なスペースだったり
まあ、いろいろあるはずです。
それを利活用したい空き家の空間の中に、プラモデルのように当てはめていきます。
もちろん、全部は当て込むことができないでしょう。
また、当て込めた機能でも、オープン時間中に見込める需要がかなり限定的なはずです。
そこで、さらに「時間」という概念を投入するのです。
この機能とこの機能は同じ時間帯で流そう。
この機能は何時までで、そのあとはこの機能に変えよう。
こんな具合にです。
例えば、ママが子供を預けて仕事ができる施設サービスが展開されています。
この施設は、ママが仕事をする空間と子供を預ける空間が、仕切りはあるけれとも、ガラス窓から子供の様子が見れるようになっており、
さらに、ママが仕事をする時間と子供を預ける時間が同じ時間として流れるわけです。
子供を預けてママがその場から立ち去ってしまうと保育託児に該当しますが、ママが隣の空間にいて、同じ時間を過ごすので、保育業には該当せずに施設配置の自由度が高いことも特徴らしい。これは機能と空間と時間の組み合わせの妙である。
また、民家をトレーニングジムにしている事例もある。
しかしだ、体を鍛えたくとも、筋肉ムキムキの人たちの中に入って、ひーひー言いながらダンベルをあげるのには抵抗があるものだ。
そこで人気があるのが、時間貸しのプライベートなジムなのだ。
民家ジムという一つの機能で埋められた空間を、ある一定時間だけ一人で独占する。
その人の独占時間が終了すれば、違う人の独占時間が開始されるのだ。
これも、機能と空間と時間の組み合わせ方なのです。
そして、世の中的に有名な事例や良く話題に出る事例というのは、
この「機能×空間×時間」が、地域の中に揺らぎながらうまく馴染んでいる。
空き家と地域という境界が、鉛筆の線を指でこすったように曖昧に馴染んでいて、
空き家の空間の中も、機能や時間がほどよく揺らぎながら馴染みあっている。
そうなると、明確な目的を持ち、その目的が達成できなくとも、なんとなくそこに行ってしまう。
言い方を変えれば、その空間の中に、その時間帯に揺らいでいる機能を楽しみにいく。そんな感じだろう。
これからの時代、「これ!」という明確なマーケットは徐々に見当たらなくなり、
地方にいけばいくほど、マーケット自体がどんどん薄くなる。
それでも空き家問題は存在し、利活用したいと考える。
そんな時、是非、この投稿を思い出していただければと思います。
合同会社鍬型研究所 代表社員
一般社団法人タガヤス 代表理事
小沢 理市郎
コメント
コメントを投稿