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リサーチの技術 その6 事例から学ぶこと 事例の個別性にとらわれるな

  事例の個別性、特殊性にとらわれるな! 社会問題、地域問題に対しての対策を考える際には、その問題の構造を分解して分析し、それを再構築することについては リサーチに技術 その2 で解説している。 ここでよく問題となるのが事例の取り扱いである。 よくこんな議論がある。 空き家はなぜ生まれるのか、空き家が発生しない対策が必要だ とのお題に対して、 親の家を相続した相続人が遠方に住んでいるケースがある とか 住み替えを行って前の家を放置してしまっているケースもある とか こんなケースもある あんなケースもある といろいろな事例をあげて解を導こうとするのだ。 いろいろな個別性をみることはある意味楽しいし、話題性もあり、記事にもなりやすい。 しかし、これらのいろいろなケースというのは、空き家問題が大きな社会問題になる現在だけの現象ではなく、人々が通常の営みや経済活動を行っていれば起こりえることであり、一つ一つにそれぞれの背景がある。その背景を深堀すれば無限の個別性が生まれる。 その個別性にとらわれてものを考えると、どうなるか。 「考えること、やることがたくさんあって、とても難しい」 となるわけだ。それ以上は先に進めなくなる。 このような 個別性に対してものを考えると、その結果は個別性に対する対処療法 にすぎず、根本的な対策とはならない。 もちろん、個別性の強い個別課題への対策が求められた場合には、 その個別性をできるだけ深堀すればよい。 事例から何を学ぶか 個別性が凝縮されている 個々の事例に横ぐしをさし、普遍的な共通項を抽出 するのだ。それを通して、世の中で、この地域で何が起こっているのか、なにが問題なのかの全体像を把握しようとすることだ。 だから、事例情報はたくさんあるとありがたいのだ。 しかし、決して個別性を見るためではない。共通項を抽出するために必要なのだ。 そして、 この共通項に対しての対策を考えることが優先 されるのだ。 先ほどの空き家の話を例にとると 共通項は、「結果的に空いている状態になること」であり、その背景に個別性があるにすぎない。 空き家になる一つ一つのケースに有効な対策を打ったとしても、 そもそも、家の数よりも、住む世帯の数が少ないので、どちらかが埋まれば、どちらかは空くのである。根本的な解決にはまったくならない。 この「空いている状態」を問題...

どう行動すべきか

 あけましておめでとうございます。 kuwalabは本日から仕事を開始しております。 しかし、たいへんな新年の幕開けとなりました… なぜ、この日に… 私の親兄弟が新潟市内に住んでいるため、まずはLINEでつながっている兄に連絡し、状況を確認しました。 親は80歳を過ぎており、電話の呼び出し音も聞こえにくい状態なため、近くに住んでいる兄を通して状況を確認しました。 なぜ、親に直接電話をしなかったか、というと、 津波警報が出ており、避難の必要性があったため、直ぐに兄から親に連絡が入ることを想定し、こちらからの通話で通話中の状態になることを回避したかったからです。 大規模な津波の被害は各地で免れたものの、その被害は甚大なものでした。 こんな時、リアルタイムで情報を見るにはSNSが一番早いので、Xで様々な投稿を見ておりました。 すると、影響力のあるインフルエンサーや有名人が、一般車両に物資を積んでボランティアに向かうとの投稿が目に入りました。 勇気ある行動 今は入るべきではない 賛否両論の書き込みがされています。 しかし、インフルエンサーや有名人は、”何もしないやつが文句をいうな”、と現地に向かったわけです。 なによりも、驚いたのは、 他に者たちにも、”ボランティアとして現地に向かおうよ”、 と被災現場へ向かう旨を誘導していたのです。 当然ながら、現地ではボランティアの受入れ態勢もできておらず、 救命、消防、道路復旧の車両が最優先の状況です。 また、ガソリンも不足しており、土砂崩れなどの二次災害の危険性もあるわけです。 インフルエンサーや有名人の呼びかけに呼応し、被災現場に向かった一般人が二次災害にあう、車が故障して緊急車両の妨げになる、渋滞を巻き起こす、現地で対応する行政職員の手を煩わす、窃盗団などの車両を紛れ込ませる、などの悪影響は考えればわかるはずですし、なによりも、現地から”今は一般のボランティアはこないでくれ”とアラームがでているわけです。 それでも、”何もしないよりまし”論を通してしまうところが。。 ボランティアを否定しているわけではありませんし、 勇気ある行動とその行動力はたたえるべきことだし、 少しでも物資が届けられたところは救われたでしょう。 しかし、現地が受け入れできないとアラームを出している中、 他の者の被災現場入りを誘発するのは、やはり間違っ...

移住・定住を考える その3 今の時代、「定住」をどう捉えるか

  今の時代、「定住」をどう捉えるか であるが、一般的には生涯に渡り住み続けることをイメージするであろう。 つまり、終の住処も移住先で求めることになる。 しかし、そうなると、 その2 で述べている住宅双六の崩壊、ライフスタイルの多様化、価値感の多様化が問題となる。 住替え行動が標準化できず、多様性を持って行われることを考えれば、移住してきた世帯をそのまま定住を促すことは難しいということは容易に想像できる。 そうなると、ターゲットとしては以下の2つとなる。 ①終の住処を求める高齢者世帯 ②ライフステージの変化を止めてそれをあがりにしようとする世帯 この2つであれば、移住した後に、住替えを行おうとする動機が生まれる頻度が低いため、定住に繋がる可能性が高い。 しかし、そうなると、出産し、子供を育てて営み続けようとする世帯が大きく抜け落ちてしまうことになる。 この属性の人たちは、更なる住替えを行おうとする動機が生まれる頻度が比較的高い人たちである。 そうであれば、生涯に渡って住み続けるという定住の概念を変えて、 「ある特定のライフステージの期間は住み続ける」 と割り切ってしまう考え方である。 例えば、「子供を出産して義務教育を受けている期間」などである。 発想を変えれば、それ以降のライフステージに突入した際には、逆に住替えがしやすくなるような支援を行う方が居住地選択として選択されやすいのではないかと考えるのである。 つまり、「定住」というものを、特定の属性を持った世帯にターゲットを絞り、特定のライフステージの期間に限定して住み続けてもらうこととして捉えれば、政策も打ちやすくなる、という発想である。 さらに、住宅ストックの視点で捉えれば、あるライフステージの期間において居住が行われ、正しいメンテナンスを促すことにより、市場性が保持された状態で、次の移住者を迎えることができることになる。 この考え方に立てば、需要と供給のマッチングもしやすくなる。 空き家の利活用についても、ターゲットを明確にできさえすれば、官民連携体制により、計画的な利活用に誘導しやすくなる。 ライフスタイルの多様化 とか 価値観の多様化 と言われている中、「定住」の概念も変えていく必要があるのではないでしょうか? kuwalab小沢理市郎...

移住・定住を考える その2 ライスステージ×ライフスタイル

  イフステージ×ライフスタイル 物事を標準化することは、物事をわかりやすく見える化することで、行動の合理化にもつながり、企業においては業務標準化が盛んに行われている。 住宅双六についても、この標準化作業を行っていたわけだが、住宅双六については、概ねライフステージの変化に支配される工程をたどっていた。 つまり、世帯分離や世帯合流などにより、世帯構成が変化すれば、当然ながら必要とされる住宅の広さや間取りも異なり、利便性や住宅価格とのトレードオフの中で、住まいが選択される。つまり、家族が増えれば、広い住宅が必要だが、都心では高くで購入困難であるし、子育て環境も考慮すると、多少利便性が悪くても郊外の戸建てを購入するというわかりやすい行動であるともいえる。 私も含めて、多くの国民は、この双六を展開する行動が一般的と考えていたであろうし、その双六を展開することを目標にしていた。住宅産業もその標準化されたプロセスに応じて住宅を供給することができた。 しかし、この住宅双六の過程においても多様化が始まった。 これを今では使い古された言葉ではあるが、ライフスタイルの多様化、価値感の多様化と言っていた。 分かりやすい例をあげると、これまでは「あがり」の形態とは考えにくかった夫婦世帯(子供なし)のライフステージでそれ以降のライフステージの変化を止めてしまい、それを「あがり」としてしまう行動である。 つまり、同じライフステージにあったとしても、ライフスタイルの多様化、価値感の多様化により、住宅選択行動が多様化してしまい、すでに標準化ができなくなっていたのだ。 今となっては、定住する場所を決めない生き方も社会的に認知されているが、当時はショッキングな行動であった。そして「 DINKS 」という言葉も生まれた。   移住・定住再考 移住と定住を分けて考える では、このように、既に住宅双六が崩壊している中で、移住・定住をいうものをどう考えていくのか、である。 まずは、移住と定住を分けて考える必要がある。 移住については、何らかの動機があって、住替えが行われることになるため、それを戦略的に行うのであれば、動機付けを与えるコンテンツが重要になることは言うまでもないだろう。 次回は、「定住」について深堀をしていきたい。 kuwa...

移住・定住を考える その1 住宅双六と終の住処の研究

先月から肺炎を患い、たくさんの皆さまにご迷惑をおかけいたしました。 また、その間、たくさんのご連絡をいただき感謝申し上げます。 メッセージの中には、このブログを読んでいただいている方から嬉しいお言葉もいただきました。 特に同業者の方や学識者からは、リサーチの技術シリーズが公表のようです。この商売を長く営んでいる者としてはうれしい限りです。 そこで、調子に乗りまして、一つシリーズを追加しました。 それが、「移住・定住を考える」です。 このテーマは、空き家問題との関係性が深く、さらには住宅政策の研究者が長年取り組んでいた住宅双六の研究、そして、現在の移住・定住策の考え方にもつながっていきます。 第一回目は住宅双六の終の住処の研究の萌芽についてです。  移住・定住については、各地方自治体の政策上、一丁目一番地にあることが多い。 これまでの移住・定住政策を振り返ると、地域内居住循環という考え方があった。 これは、ライフステージや心身の状況が変化しても、それに対応した多様な住宅ストックが地域に配置されていることによって、地域内で循環して居住継続を行えるようにしようとする考え方であった。 過去に、私が担当したこの手の計画書でも、この考え方を用いていたことが多い。 そうなると、どのようなライフステージで、どのような住宅が必要となるか、需要があるかを把握する必要がある。 当時は、「住宅すごろく」という言葉が、住宅政策関連の業界内では流行語大賞並みに用いられていた。 これは、住替えの工程を双六に例えて、例えば、親元から世帯分離をして賃貸ワンルームに居住し、結婚して中心部のマンションに住替え、子供ができたら郊外の戸建てに住替え、と言った具体に、ライフステージの変化に伴い、住替えの双六を展開していくものを表現したものだった。 日本の高度経済成長期での都市居住者の住宅の住み替えの過程を双六として表現したものである。上田篤氏が考案したものであるとウィキペディアでは紹介されているが、私の知る限りでもそうだろう。 時代時代での住宅双六を調査分析し、双六として表現する必要があったのだ。特に 1990 年代に盛んに研究が行われており、筆者もその中の一人であった。 この分析は、ライフステージの変化と住宅選択の行動を標準化しようとする行為とも言え、当時は世帯分...

ウィルス性肺炎なるもの 分析屋が分析してみた

 これまで毎週かかさずにブログを更新していましたが、ここにきてそれが途絶えてしまいました。 9月22日(金)のことでした。 どうも体調不良が続くので、いつもの病院に行ってきまして、インフルエンザ、コロナの両方とも陰性で、風邪薬をいただいてきたのですが、 翌日から一気に40度近い高熱が出まして、それが23日から25日まで続きまして あわてて同じ病院に行ったところ 「んー、どうもただの風邪じゃないね」 ということで、CTと血液検査をしたわけです 「ほらね、肺がすりガラスみたいになっているでしょ」 ということで、ウィルス性肺炎だったわけです。 ようやく、本日10月2日に少しずつですが仕事ができるようになりました さて、ここでは、一応、いろんなものを分析してきた人間として 普通の風邪とどんな症状の違いがあるのかについて振り返って分析してみたいと思います。 ①風邪薬を飲んでも改善しない体調不良が続く 倦怠感などの体調不良を感じたのは9月18日(月)あたりでした。 その時から、いつもの市販の風邪薬を飲んでいたのです。 もちろん、風邪薬は風邪を治すものではないということは理解していますが、 私の場合、たいていはこの薬を飲んでお茶をがぶ飲みして寝てしまえば数日で復活するのですが、今回は「まったく」と言っていいほど風邪薬が利きませんでした。 むしろ、じわじわと体調不良感が増していったのす。 ②急激な高熱と急激な体調悪化 わたしはコロナにはかかったことがないので比較はできませんが、インフルエンザには何度もかかっていますので高熱がでる感じが比較できるのですが、今回はインフルエンザよりも、急激に熱があがり、急激に猛烈な倦怠感が襲ってきます。 倦怠感が強すぎて夜が眠れないという体験をしました。 ③息苦しさと滝のような痰 滝のようなという表現があっているのか不明ですが、とにかく何をしていなくても、ものすごい量の痰がこみ上げてきます。 これは体験したことのない量です。出しても出してもキリがありません。 それに加えて、心拍数があがっている状態で肺の息苦しさがあります。 ギュギュというこれまで聞いたことのない音が胸から響いてきます。 恐ろしや。。 ④水が飲めない 恐ろしいのがこれ、「水が飲めない」 インフルエンザで高熱を出した時には、とにかく水分を取ろうとしました のどが渇いて仕方がなかった...

空き家のお話 その4 課題の類型ととるべき対策

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空き家問題の相談事の変化  特段、空き家関係に特化して営業しているわけではないのですが、各方面からご相談いただく内容は、やはり空き家問題が多いな、と感じています。 しかし、ご相談いただく内容に変化がみられているのも実感しております。 数年前までは、 空き家のお話その1 でも書いたように「何から手をつけてよいかわからない」とのご相談が多かったのですが、昨今では、ご相談いただく内容がかなり明確化しています。 いろいろな地域からご相談いただくため、その地域の現状と、その現状から想定される問題・課題、そして対応策を大きく類型したものが下図となります。 タイプAは、主に地方都市や農山間地域、タイプBは大都市近郊、タイプCは東京都心をイメージしていただければわかりやすいかと思います。 上記した「ご相談いただく内容が明確になった」というのは、それぞれのまちの特性によって、ご相談事がタイプA,B,Cのいずれかに該当する明確性がみられるようになった、ということです。 首都圏のある市では、空き家が出てもある程度は市場で解決できることを基本認識として、市場の中での解決だけでなく、まちづくりの視点として計画的に利活用を促したい、という ご相談内容でした。これはタイプBからCに該当します。 一方、甲信越方面のある市では、地域を巻き込んだ空き家の相談・対応体制を構築したいとのご相談内容でした。これはタイプAからBに該当します。 行政の皆さまも、「今、我がまちで何をすべきなのか」の課題認識があったうえで、「さて、ではどうやって進めればよいのか」とのご相談事に変化してきたわけです。 空き家問題の大きな一歩 実は、これは大きな一歩です。 これまでは課題認識を関係者間で共有するのにたくさんの時間を要し、結局、クリアに整理できないまま計画づくりを行うため、まるでフォーマットがあるかのように、同じような空き家関連の計画書が大量生産されてきました。 さらに、具体的に何をするのかのリアリティに欠けているのです。 出発地点の段階で、ある程度の課題認識ができていれば、「さて、どうやろうか」というアクションプランにスムーズに入ることができるのです。 これまでご相談いただいた内容を整理すると、やはりタイプAに該当するものが多いな、という印象です。 タイプAでは、行政にかかる負担も大きく、行政サイドでも十分なマ...